誇り高き燃える集団を作るには

働く人にやさしく、かつ、企業として利益を出し続けるためには、この「燃える集団作り」が不可欠であり、過去の経験から少し検討してみた。この「燃える集団作り」は、言い換えると「やる気のあるメンバーの灯を消さない、サムライを活かしダメにしない」ともとらえることができ、大きく次の3つにまとめることができると考える。ここで言うサムライとは、しかたなく組織に属しているメンバーではなく、自らやる気を持ち、自らの意思で組織に属し、かつ、組織の成功のために多少の自己犠牲はやむなしと考えているメンバーである。

燃える集団を作る3要素

○ウソをつかない
○聖域を作らない(レッテルを貼らない)
○いいとこどりしない(責任をかぶせない)

まず、第1のウソをつかないということであるが、こんなことを聞いたことがあった。Aさんは社長の右腕として中小企業B社で営業部門の長として働いていたが、ある時社長から「A君、次の新卒採用をすべて君に任せるので段取りして進めて欲しい」と言われた。Aさんは、計画を報告しつつ、進めていき、数名の学生に絞り込んだ。その後どの学生に内定を出すべきか、社長に相談すると「君に全て任せるから判断してくれ」という返事であった。Aさんは、その際社長に報告していた通りの優先順位で、学生に内定書を送付した。その後、社長に内定を送付した旨を報告すると、社長の返答は「あいつにも内定を出したのか、それは良くないな。」というものであり、撤回しろと言うものであった。Aさんは、その日の夕方に学生へ連絡を取り、内定を取り消す旨の話をした。電話の向こうで学生は、「他社の内定を断った後で、、、」と、泣いていたという。
この話がすべてではないが、ウソの中でも人事面や権限移譲に関する問題の場合は、後々相当禍根を残すことになると思う。バブル崩壊後(私はバブル入社組です)、リストラを行った後に自らも退職する方々を何人も知っている。サムライはウソをつくのも、つかれるのも大変嫌うのである。

第2の聖域を作らない(または、レッテルを貼らない)ということであるが、こんな例があった。Cさんはベテランの営業マンで、ひとつの営業所を任されていた。そのCさんはある時こんなことをつぶやいた。「私には権限が無いので、なかなか思うように営業できていないが、こんなもので良いと思います。」この背景は、本社の営業所長は、社長の親族であり、値決めの権限から様々なアフターフォローなど、社内への要求事項を優先させる権限など、目に見えないものがいっぱい備わっているとのことであった。現実にそんな権限があるのか無いのか、確認する気もわかないと言う。また、この会社では一度失敗したことが社長の耳に入ると、「彼はあの時ミスしたから」ということが、後々まで尾を引くという。原因のひとつとして、この聖域内の人たちによる、聖域を守るための情報操作であることは考えるにたやすい。こういった背景の中で、ベテラン営業マンのCさんは、そこそこの努力しかしなくなっていったらしい。

第3のいいとこどりしない(または、責任をかぶせない)であるが、これは多くの方々が経験しているのではないだろうか。とある中小企業に勤める総務のDさんは、社長のもとに、銀行の営業マンや業界紙の記者などが訪ねてきた際に、何度か同席したことがあり、その時のことを、こう話す。「よく他社の方々から、あの事業は見事でしたが誰が考えたのですかと言われて、その度に、社長は俺が考えて命じてやらせたんだよ、と言うことがあります。実際に、事業を考えた人や苦労して推進した担当者も良く知っていますから、あんまりいい気持ちはしないですね。」当然この社長は、第3者の前では、ミスに関しても「俺は何にも聞いていない、彼らが勝手にやったことだ」と言うらしい。
企業のトップとして背伸びをする行為は必要だとは思うが、企業の中で自分だけを輝かせようとする行為は、サムライを無力にする特効薬ではないだろうか。

この3つが、燃える集団をつくるために、リーダーが決して犯してはならない行為だと私は考える。

文責:横原 大

 

2014/06/05